学会発表Publication

学会発表

「安心感の輪」子育てプログラムのファシリテーターによる、実践報告や研究発表について、報告があったものを紹介します。
○ 日本子ども虐待防止学会 第21回学術集会にいがた大会

日時: 2015年11月21日(土) 14:00~15:40
応募シンポジウム37:
「社会的養護におけるアタッチメント支援の意義と展望:「安心感の輪」子育てプログラム(COS-P)の実践」
企画・司会:北川恵(甲南大学文学部)
話題提供:久保樹里(大阪市こども相談センター)
話題提供:河合克子・宮口智恵(NPO法人チャイルド・リソース・センター)
指定討論:森田展彰(筑波大学医学医療系)

概要の報告:
 「安心感の輪」子育てプログラム(COS-P)を、とりわけ関係性に深刻な傷つきを抱えた子どもと修復的に関わる社会的養護提供者に提供した先駆的な取り組みについての話題提供を行い、その意義と展望について検討するためにシンポジウムを企画した。
 久保先生は、アタッチメント形成に深刻な問題を抱えている児童養護施設の子どもたちには専門的ケアが必要であることを述べたうえで、その担い手であるケアワーカーにプログラムを提供した実践を報告した。プログラム受講体験の現場での持続的影響を検討するために、ふりかえりを行った結果についても報告した。
 河合先生・宮口先生は、児童相談所の委託を受けて被虐待児とその親に家族再統合プログラムの提供を行っているチャイルド・リソース・センター(CRC)の取り組みを紹介したうえで、施設職員が自らと子どもとの間で育む健全なアタッチメントの重要性を理解し、日常の養育に反映させることが必要と考えて、乳児院職員にプログラムを提供した実践を報告し、その意義を考察した。
 日本の児童福祉の現場でアタッチメントの視点に基づく実践を取り入れていくことの意義と課題について、森田先生が指定討論を行い、全体で討議した。(報告者:北川)


○ 日本発達心理学会 第27回大会(北海道大学)

日時: 2016年4月29日(金・祝) 9:30~11:30
自主シンポジウムSS1-1:
『アタッチメント理論に基づく子育て支援「安心感の輪」子育てプログラムを用いた実践を通して』
企画・司会:榊原久直(神戸松蔭女子学院大学)
      酒井佐枝子(大阪大学大学院)
話題提供 :久保信代(関西福祉科学大学)
話題提供 :酒井佐枝子(大阪大学大学院)
話題提供 :榊原久直(神戸松蔭女子学院大学)
話題提供 :竹田伸子(大阪彩都心理センター)
話題提供 :河邉 眞千子(あいち小児保健医療総合センター)
指定討論 :北川恵(甲南大学)

概要の報告:
 「安心感の輪」子育てプログラム(COS-P)を、自閉症スペクトラム児を抱える養育者、胎児期の子どもを抱える養育者、自身が精神疾患を抱える養育者という、それぞれに関係性の困難さを抱えていたり、関係性の大きな転機にあったりする養育者らを対象に実施した取り組みについての話題提供を行い、その意義と展望について検討するためにシンポジウムを企画した。
 久保先生は、自閉症スペクトラム(ASD)児とその養育者へのアタッチメント理論に基づいた関係性支援とともに、養育者への心理療法的支援の意義についてCOS-Pでの実践を通して明らかとなった点について報告をした。
 酒井先生は、ASD児の養育者が抱えるASD特性と質的に類似した表現型(BAP:Broad Autism Phenotype)に注目し、プログラムを提供する際の具体的工夫(視覚提示や概念の明確化など)について報告をした。
 榊原先生は、アタッチメント関係を支える養育者の心理機能の1つであるメンタライゼーション(Mentalization)に着目し、ASD児というラベルの影響や、ASD児との日々の関係性の中でこうした機能が低下する様子や、COS-Pを通したその回復プロセスを報告した。
 竹田先生は、0歳児の虐待死リスクの高さへの問題意識から、まだ子どもとの関係性を具体的に想像することが困難である妊娠期を含めた、妊娠期からの切れ目のない支援を目指して、予防的な関係性支援としてCOS-Pを実践することの意義について報告を行った。
 河邉先生は、医療機関での心療科的問題を持つ子どもとその養育者への支援としてCOS-Pを導入することによる家族の変化を報告した。加えて、多職種連携の基盤となる視点としてCOS-Pが果たす役割についての実践を振り返った。
 様々な困難さを抱える子どもや養育者を支える子育て支援の中で、アタッチメントの視点に基づく実践を取り入れていくことの意義と課題について、北川先生が指定討論を行い、全体で討議した。(報告者:榊原・酒井)

参加者から
 4月末の札幌としては30年ぶりの雪になった発達心理学会で、COS-Pの実践についてのシンポジウムに参加しました。既に長く臨床実践をされている先生方が、お子さんとの関係性構築に難しさをもつ養育者に対してCOS-Pを実践されたお話で、それぞれのご発表から、養育者の認知の変容、子どもの行動の変化などの実践の手応えを伺いました。特に、実践の中で、それぞれの養育者の「苦手と得意」をアセスメントし、そこに向き合うことができるように配慮しながらファシリテートすることの重要性を感じました。自分の実践を振り返る貴重な機会となりました。体験をご発表くださった先生方、指定討論の北川先生に感謝いたします。ありがとうございました。